上肢のトレーニング 長掌筋:進化の痕跡と筋トレ効果
肘の内側から手首の付け根にかけて存在する『長い手のひら』の筋肉、それが長掌筋です。この筋肉は、前腕の浅層にある筋肉の一つで、肘を曲げる、手首を曲げるといった動作に関わっています。長掌筋を確かめる簡単な方法があります。軽く拳を握り、手首を掌側へ曲げてみてください。この時、手首の真ん中に腱が浮かび上がるのが確認できるはずです。これが長掌筋の腱です。ただし、全ての人がこの腱を持っているわけではありません。およそ14%の人は、生まれつきこの筋肉を持っていないと言われています。ご自身の腕で確認しても腱が見当たらない場合は、長掌筋がないのかもしれません。しかし、長掌筋がないからといって、日常生活に何ら支障はありませんのでご安心ください。日常生活でそれほど重要な役割を担っていないため、長掌筋は退化しつつある筋肉と考えられています。実は、他の動物、例えば猿にとっては、長掌筋は木登りなどに欠かせない、重要な役割を果たしています。長い進化の過程で、私たち人間にとって長掌筋はあまり必要ではなくなったため、徐々に退化してきたと考えられます。そのため、長掌筋は進化の名残とも呼ばれています。現代においては、この小さくてあまり使われていない筋肉が、思わぬところで役に立つことがあります。それは、外科手術です。他の部位の腱が損傷した場合など、長掌筋の腱を移植に用いることがあるのです。長掌筋は、他の重要な機能に影響を与えることなく、他の部位に移植できるため、大変貴重なのです。長掌筋は小さな筋肉であるため、日常生活で意識して使うことはほとんどありません。しかし、手首の細かい動きや握力にわずかに貢献しています。特に、物を握ったり、手首を曲げたりする際に、長掌筋は他の筋肉と共に働いています。私たちが意識することなく、長掌筋は日々、小さな役割を果たしているのです。
